ケララの土地改革
今日の写真は病院での配給の様子です。
引き続き、パンやバナナ、お水などをお配りしています。
1年でもっとも暑い時期を迎えましたが、ケララ州では雨が割と多く、予想よりも暑くなく過ごせているようです。
でも夏はまだ始まったばかりで、北インドでは早くも熱波に見舞われているので、油断できません。
皆さん体に気をつけて過ごしてほしいなと思います。
前回、ケララ州の発展について少し更新させていただきましたが、その記事の中で、ケララ州の土地改革も発展に寄与したとあったので、こちらもまとめたいと思います。
インドの独立前、ケララ州は「ジャミーンダーリー制度(封建的地主制)」に近い土地制度を持っていたとされます。
土地の大部分は地主によって所有されていて、農民はその土地を借りて耕作する「小作人」でした。
小作人は地主に地代を納めながら農業を行っていましたが、以下のような問題があったとされます。
・永続的な土地所有権を持てない
・地代の支払いが過酷
・収穫の大部分を地主に取られる
・不作や災害時でも地代を免除されにくい
こうした問題によって、農民の多くが貧困にあえぐ不安定な生活を強いられていたとされます。
ケララ州は1957年に世界初の民主選挙で選ばれた共産党政権が誕生した州でもありますが、この政権の主要公約のひとつが、この「土地改革」でした。
主な施策としては、以下のようなものがあります。
・小作制度の廃止
・土地を借りて耕作していた小作人に、その土地の所有権を与える
・地主は一定以上の土地を所有できず、それを超えた分は政府が買い上げ、無土地農民に分配
・土地保有の上限設定
・個人または家族単位で持てる土地の面積を制限
・それ以上の土地は「余剰地」として政府に収用され再分配
・住居用土地の提供
・使用人や農業労働者が地主の敷地内に小屋を建てて住んでいた場合、その住居地に住む権利を保障
こうした土地改革により、ケララ州は他州と比べて際立った成果を上げたとされます。その結果が次のようなものです。
・約130万人の小作人が土地所有者になった
・封建的な階層構造が崩れたことで、社会の平等意識が拡大
・所得の格差が縮まり、教育や保健への投資が進んだ
・その後の農村部の識字率向上や女性の社会進出に繋がった
他のインドの州でもこの土地改革は試みられましたが、地主階級の政治的影響力や行政の不正により、実効性に欠けるものが多かったようです。
一方で、ケララ州では政治的な意思が強く、市民の支援、労働組合や農民運動の後押しがあったため、改革が成功したとされています。
このケララ州の土地改革は、社会構造そのものを変革した重要な出来事で、これによりケララモデルと呼ばれる「高い社会指標と福祉の達成」が可能になったとされています。
ただ、近年の都市開発の進行により、農地が住宅や商業施設に転用されるなど、農業離れも進んでおり、食料生産が減少しているなどの課題もあります。
政府の財政難でケララモデルのあり方も改革が必要な時になっているようなので、今後も注視しながら、SEEDS-INDIAの活動に協力していくことができればと思います。
皆様、いつもありがとうございます!