医療の格差
今日の写真は病院での食事の配給の様子です。引き続き、パンやバナナ、お水などを患者さんへ直接お渡ししています。 まだまだ先だと思っていましたが、ケララでは5月27日頃にモンスーンが始まるのではないかと予報が出されています。今は一番暑い時期で熱中症などの心配がありますが、モンスーンが始まれば感染症などの心配もあります。とにかく穏やかな自然の巡りを祈るばかります。 ケララ州はインドの中でも識字率が高く、平均寿命は長く、乳児死亡率が低いことで有名です。これは「ケララ・モデル」として賞賛され、「福祉国家の縮図」とも言われてきました。でも、その成功の背後で深刻化しているのが、格差の問題と言われています。 この格差の要因はいくつかあるとされていますが、大きいのは、海外出稼ぎ労働者からの送金が、特定の家庭に集中している点とされています。特に湾岸諸国(ケララからの出稼ぎ労働者が多い地域)からの送金によって、一部の家庭では消費が急増していますが、出稼ぎに行くことができない家庭や農村部の人々はその恩恵を受けられていません。この湾岸諸国への出稼ぎ経験を持つ家庭と、そうでない家庭との間で「消費能力の差」が拡大していることが問題とされています。 特に医療の面。1980年代以降、インドでは私立医療の台頭が加速したとされていますが、ケララも例外ではありません。実際にSEEDS-INDIAの周辺の街にも大きな私立病院がたくさんあります。そして、出稼ぎ送金を得た家庭がこうした私立医療に多くを支出していると言われます。低所得層の家庭では費用の壁が大きく立ちはだかり、必要な治療を受けられないまま症状が悪化するケースもあるとされています。 このような医療格差は、健康の問題にとどまらず、病気の長期化や高額な治療費が家庭の経済を圧迫し、子どもの教育機会や生活の質にも影響を与えているとされます。結果として、医療格差は更なる教育格差や所得格差へとつながり、社会全体の分断を深める要因となっているとされています。 公平な医療制度を実現するには、公的医療のさらなる強化と私立医療との連携が不可欠とされていますが、ケララ州では深刻な財政難に直面しており、容易ではありません。 食事の配給を続ける病院は公立の病院であり、日々の生活に困難を抱える方々が多く訪れています。一食の支援ではありますが、それがその日を乗り越える唯一の支えと...